週足チャート

日足チャート

4時間足チャート


1. ファンダメンタルズ分析

2026年8月の金(XAU/USD)は、6月から7月にかけて続いた調整局面から大きく反発し、月前半を中心に上昇基調が鮮明となりました。
8月初旬から中旬にかけて金価格は約400ドル、率にして約10%上昇し、一時4,400ドル前後まで回復しました。

上昇の大きな要因となったのが、米国の金融政策見通しの変化です。
7月末のFOMC後、市場ではFRBの政策姿勢が想定ほど強いタカ派ではなかったとの見方が広がりました。
さらに米雇用関連指標の弱さと比較的落ち着いたインフレ指標が確認されたことで、追加利上げ観測が一時的に後退しました。

米金利低下とともにドルも弱含み、利息を生まない金の相対的な魅力が高まりました。
6月には「米金利上昇・ドル高」が金価格を強く押し下げましたが、8月前半はその逆となる「米金利低下・ドル安」が金価格を押し上げる展開となりました。

さらに中東情勢の再緊迫化も金買いを後押ししました。
米国とイランを巡る軍事的緊張が再び強まり、安全資産として金を保有する動きが拡大しました。
7月までの中東リスクは原油高とFRB利上げ観測を通じて金売りにつながる場面もありましたが、8月前半は安全資産需要の方が強く意識されました。

中央銀行による金購入も引き続き重要な下支え材料となりました。
世界の中央銀行では外貨準備の分散や地政学リスクへの備えとして金を増やす動きが継続しており、中国も7月に約20トンの金を純購入しました。
中国の金保有量は過去最高水準となり、短期的な価格調整局面でも公的部門からの需要が金相場を支えています。

また、世界の中央銀行を対象とした調査では、今後12カ月で金準備を増加させる予定と回答した中央銀行の割合が過去最高水準となりました。
こうした構造的な需要は、金価格が4,000ドル近辺まで下落した局面で押し目買いが入りやすかった理由の一つと考えられます。

しかし月後半には再びFRBの金融政策が金価格の上値を抑えました。
Jackson HoleでFRB議長Kevin Warsh氏がインフレ抑制について「まだやるべきことがある」との趣旨の発言を行い、金融引き締め継続への警戒が強まりました。

発言後、市場が織り込む9月FOMCでの利上げ確率は大きく上昇し、米2年債利回りは4.3%台、10年債利回りも4.7%台へ上昇しました。
ドル指数も上昇したことで、8月前半に急騰した金には利益確定売りが入り、月末にかけて上昇ペースが鈍化しました。

そのため8月は、「金融緩和期待・ドル安・地政学リスクで大幅上昇した前半」と、「FRBのタカ派姿勢再確認によって上値を抑えられた後半」という二つの局面に分かれた月となりました。

2. 地政学リスク・政治リスク

  1. 米国・イラン情勢の再緊迫化
    8月は中東情勢への警戒が再び強まり、安全資産として金を保有する需要が拡大しました。
    軍事衝突が拡大する場合には、短期間で金価格が急騰する可能性があります。
  2. FRBの金融政策
    月前半は利上げ観測後退が金買い材料となりましたが、Jackson Hole後には再び利上げ観測が強まりました。
    8月の金市場では地政学リスク以上に、米金利見通しが価格の方向性を左右しました。
  3. FRBの独立性への懸念
    米国では中央銀行の政策運営やFRBの独立性を巡る議論も市場で意識されました。
    中央銀行への政治的圧力が強まる場合、ドルや米国債への信認低下を通じて金需要が増加する可能性があります。
  4. 中央銀行の金準備拡大
    中国をはじめとした中央銀行による金購入は継続しました。
    短期的な投機資金とは異なり、公的部門の購入は長期保有を前提とする場合が多いため、金価格の構造的な下支え要因となります。
  5. 米国の財政赤字・政府債務
    米国の財政赤字と政府債務への警戒も、中長期的な金需要を支える要因です。
    米国債への信認が低下する局面では、代替的な準備資産として金が選好される可能性があります。

3. テクニカル分析

時間軸 主要ポイント
週足 6月〜7月の調整局面から大きく反発し、4,400ドル前後まで回復。長期的な上昇トレンドへの復帰を試す展開となった。
日足 4,000ドル台前半から急速に上昇し、4,200ドル、4,300ドルを順番に突破。4,400ドル前後では利益確定売りが入りやすくなった。
4時間足 4,300ドル〜4,350ドル付近が短期的な支持帯として意識される。上値では4,400ドル〜4,450ドルが重要な抵抗帯となる。

4. 注目経済指標

注目イベント 影響度 ポイント
Jackson Hole講演 ★★★★★ Warsh議長のタカ派発言によって9月利上げ観測が強まり、米金利・ドル上昇を通じて金の上値を抑えた。
米雇用統計 ★★★★★ 弱い雇用関連指標が月前半のFRB利上げ観測を後退させ、金価格上昇の主要材料となった。
米CPI・PCE ★★★★★ インフレ鈍化なら米金利低下を通じて金買い、再加速ならFRB利上げ観測から金売りにつながる。
米2年債・10年債利回り ★★★★★ Jackson Hole後に2年債が4.3%台、10年債が4.7%台へ上昇。金の短期的な上値を抑える材料となった。
ドル指数 ★★★★★ 月前半のドル安が金上昇を支えた一方、月末のドル反発は金価格の上値を抑えた。
中東情勢 ★★★★☆ 米国・イラン情勢の再緊迫化によって安全資産需要が増加。軍事衝突拡大時には急騰リスクがある。
中央銀行の金購入 ★★★★☆ 中国などによる金準備拡大が続いており、中長期的な金価格の下支え要因となっている。

5. 8月の戦略シナリオ

シナリオ 注目水準
強気シナリオ 4,450ドルを明確に上抜けし、米金利とドルが再び低下する場合は4,500ドル〜4,600ドル方向への上昇を想定。中東情勢悪化や中央銀行需要の拡大も上昇材料となる。
レンジシナリオ 4,250ドル〜4,450ドルを中心とした持ち合い。FRB利上げ観測と地政学・中央銀行需要が相殺される展開。
弱気シナリオ 4,250ドルを明確に割り込み、米金利とドルがさらに上昇する場合は4,100ドル〜4,200ドル方向への調整を警戒。4,000ドル台前半まで下落すれば中期的な上昇トレンド再開の判断も見直す必要がある。

リスク管理


2026年8月の金相場は、6月から7月にかけて続いた調整から大きく反発した月となりました。
月初から中旬にかけて約400ドル、率にして約10%上昇し、4,400ドル前後まで回復しました。

上昇の背景には、米雇用の弱さやインフレ鈍化を受けたFRB利上げ観測の後退、ドル安、米国債利回り低下、中東情勢の再緊迫化など複数の材料が重なりました。
さらに中央銀行による継続的な金購入も、4,000ドル台前半での下値を支える重要な要因となりました。

一方、8月後半にはJackson HoleでWarsh議長がインフレへの警戒を改めて示し、市場の9月利上げ観測が急上昇しました。
米2年債・10年債利回りとドルが上昇したことで、4,400ドル台では金の上昇ペースも鈍化しました。

9月に向けては、4,250ドル〜4,300ドルを維持できるか、そして4,450ドルを明確に突破できるかが重要となります。
米インフレと雇用がさらに鈍化してFRBの利上げ観測が後退すれば、4,500ドルから4,600ドル方向への上昇余地があります。
一方、FRBが実際に追加利上げへ動くとの見方が強まれば、4,200ドル前後までの調整も想定する必要があります。

8月の反発によって金市場は再び強気方向へ傾き始めていますが、1月につけた過去最高値5,595ドルから見れば依然として大きな調整幅を残しています。
短期的な米金利動向と、中長期的な中央銀行需要・地政学リスクのどちらが優勢になるかを見極めながら、9月の方向性を判断したい局面です。